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今試される愛馬魂 〜 ウインアンセム戦記 vol.2 〜
 
ソフトバンクファンのファン⇒バイ男
2005/08/23 (Tue)
ウインアンセム

 そこに至る経緯に踏み込むと話が長くなる。要は今季絶好調であるサブマリン・渡辺俊介のピッチング観戦のために取っていた夏休み初日に、愛馬・ウインアンセムの船橋競馬出走がちょうど日中の空き時間を埋めるかのごとくジャストフィットしたということ。船橋競馬経由で2駅先の千葉マリンナイターへ。当初出走を予定していた前週末の新潟で震度5強の中越地震が発生したことを加味してもこれは超絶たるハマりきったローテーションだった。


 アンセムが出走を表明したのは当日9Rに組まれたナティーサドル特別。南関競馬のサイトで出走表を確認しようとしたところ、レース名に「ナティーサドル特別 3歳(未格)選抜馬」とのカッコ書きがあったのだがこの未格を『失格』と勘違いしまずは一杯食わされる。

 出走馬は全11頭でうち7頭がJRAの所属馬だった。どうせ地方競馬出走ならJRA馬は少ないに越したことはなかったのだがいずれもがダート競馬を経験済みの、どこかの馬とは違い過去5走の欄に空白など見当たらないほどキャリアは豊富な馬たちが相手。地方出走と聞き甘く見ていた節もあったが「やっぱ厳しいかな」、そんな思いが心を過ぎった。



≪パドック≫
ウインアンセム

ウインアンセム


 馬名表記のない地方競馬のゼッケンを背負い、パドックにアンセムが現れる。前回同様、入れ込む素振りなどどこ吹く風、たんたんとマイペースで周回を重ねた。どういうわけか、厩務員が大幅に若返っている。新潟の酷暑に担当馬よりも先にヘバリ顔を覗かせこちらに要らぬ心配まで抱かせたあのおじちゃんではなかった。果たして超神水でも飲んだのだろうか。


今日はやる気満々(厩務員が)
ウインアンセム


たまには縦写ショットも
ウインアンセム


 そしてこの日のアンセムは前回着用していたゴツいバンテージを巻いてもいなかった。生足の愛馬にうっとり。どこかが目立つほど腫れているという様子は窺えなかったが、ホワイトソックスの内側に隠されたピンク色の肌にくっきりと浮かび上がる細い腱の1本1本が妙に生々しく、そして思わず目を細めたくなるほどか弱く感じられた。


一番右の脚が最も丈夫な脚かも
魅惑な生足


 本馬場入場時も気負う気配はない。新潟では既出走馬に返し馬の道を譲るなど勝負の舞台の中でただ一騎"お客さん"の役を演じねばならなかったアンセムだったが、この日は新人・塚田騎手から嘉藤騎手に乗り代わったこともあり、この1人と1頭はこれから厳しい戦いを共に向かえるパートナーとしての関係をお互いに認め合い堂々と立ち振る舞っているように思えた。


宙に浮くボロ
ウインアンセム


 こうして2戦目のレースを迎えた。船橋の1マイルコースはスタート地点がゴール前200m地点にあるため、ゴール板手前で待ち構える我々の面前を2回通ることになる。例によってファインダーを覗き込みながら首を伸ばしスターターの合図を待つ。

 すんなりとゲートが開いた。然したる好スタートではなかったがのっそりと出て他馬に進路を阻まれることなく互角の位置に付ける。今回は逆噴射することもない。課題は位置取りだった。初ダートも地方競馬のぬるいであろうペースに対しどれだけのポジションを取ることができるのか。発馬こそ五分に出たもののまた前回のように自分だけの競馬をさせられることになるのか。

 新潟での諸行無常以来、絶えず疑心暗鬼に囚われ続けていた我々は目を見張った。アンセムは追っ付けながらも前から5頭目、それも外目のいい位置で1周目のゴール板前を通過していったのだ。あれだけの苦境に曝され続けてきた馬がなんと普通にレースに参加しているではないか。このとき、シャッターを切りながら初めて、ウインRCに入会してから本当に初めて「自分はオーナーなんだ」と嬉しいばかりの感慨の炎が心底から滾ってきたことを覚えている。


 アンセムは好位をキープしていた。「掲示板イケるかも」。最悪の事態(地方競馬でも最後方惨敗)を脳裏に描こうとするトラウマから感激の矜持と共に脱していた私の夢は広がるばかりだった。

 出遅れ気味のままそれまで後方にいた一番人気馬が3角手前で小回りコースを意識してアンセムの外から進出を図る。見慣れたピンクに緑の襷の勝負服、地元船橋の雄・石崎隆之だった。すでに鞍上の手は軽くとはいえここまで動き通しだったアンセム。ここで一気に寄せられては戦意喪失の上でズルズル後退してもおかしくはなかった。しかしアンセムはそうはさせなかった。信頼の手綱に導かれ追う者の気概を推進力へと変え、離されじと食らい付いていったのだ。

 4角を回り再び直線に戻ってくる。マクり切ったベルスエルテに抵抗していたがんばりがここで活きた。それまで前を進んでいた他馬がまとめてその内にいる。もう手を伸ばせば届くところまで迫っていた。必死に追う嘉藤騎手。そしてムチに応えるアンセム。「もしかしたら勝てるかも!」。ゴール前で愛馬を待ち続ける聴衆の声が一段と高くなった。1頭、また1頭と先行馬を撫で斬りにしていくアンセム。突き抜けろーっ!!!


 その差2馬身。勝ったハンセル産駒にわずかに遅れた2着でアンセムは入線を果たした。前走18着のダート初挑戦馬の激走という意味では大健闘と言ってよかった。パドックに入った時点で(ファンに推された?)5.3倍の3番人気という破格の地位にあったアンセムのオッズは最終的には16.9倍の7番人気という妥当な評価に落ち着いていた。そして1番人気馬との馬連が53.4倍。パドックを去るときの最後のひと言「やっぱり馬連総流しも買っておいて」。想いが少しだけ身にもなったレースだった。

 レース後、興奮冷めやらぬまま奮える手でメールを打ち結果速報を各地の職場へと送信すると速攻で1本の着信が返ってきた。思いも寄らぬ快走がそのまま歓喜の声となって話し口を抜けていく。しかしこのときアホ声で話す私の、柱を背にしたちょうど反対側でレクチャーが行われていたのだった。「今日はレクチャーやってないんじゃないの〜」などと陽気にヌケヌケと話し電話を切った後にその輪の存在に気付く、とことん詰めの甘い男。結局会終了直前の1フレーズしか聞くことはできなかった。

「今日がこういう好走だったことでまた交流戦、例えば浦和とかになる可能性もあります」

 その後のウイン発メールの内容からも「次走は中山」と伝えられているところからして地方挑戦はあくまで可能性の範疇の一選択肢なのかもしれないが、私個人としては今回重いと言われている船橋の開幕日ダートをある程度こなせたところからもう一度交流戦に出走して確実に1勝をゲットしてもらいたいという思いもある。中央の残り少ない未勝利戦、壮絶な多頭数の争いでどうなるか。しかし、この日の一戦がアンセムの今後を語る上で限りなく前進した2戦目になったことは間違いないところではある。

 


追想
 

 ここまで長々と付き合っていただき、やっと終わったかとお思いの皆さんの中には、ここまでの流れで何か腑に落ちないことに気付いている方もいるかもしれない。そう、撮っていたであろうはずの返し馬以降の写真が一切掲載されていないのである。


 実は、この後予定通り千葉マリンスタジアムへと向かい、我々はソフトバンク側のレフトスタンドに陣取り名だたる投手戦(と言っても登板がスイッチされ、この日は俊介ではなく小野だったのだが)が始まるのを今か今かと待ち望んでいた。しかしやってきたのはホームランボールではなくバケツを零したようなという表現がぴったりの大雨と黒い雲、そして豪快な雷様だった。

 スタンドで祝杯を重ねながらヒマな時間を有効に活用しようと、私は所持していたノートパソコンにアンセムの勇姿画像を取り込み始めた。今回も合計で200枚ほど撮っていたため時間がかかる。作業中のVAIOを脇に置き、更なる杯の継投策に余念がない我々。「さて、どのくらい進んだかな」とふと目を落としたとき、画面上にメッセージが浮かんでいた。

「トラック障害のため読み込みを停止しています」
↑正確な表現は忘れたが、こんなようなもの

 異変に気付きその後何度も読み込みにトライするも最終的には差し込んだだけでコンパクトフラッシュのリードエラーが導かれるようになってしまっていた。カメラのプレビューでは確認できるのにPCに取り込めない哀れなデータたち。懐かしむようにカメラ背面の小さなモニターを覗き込みこの日の最初のショットから順にめくっていると、返し馬からいきなり2周目の直線へとデータが飛んでいることにも気付く。トラック番号6101-6200間のちょうど100枚のデータが消失していた。そしてこの豪雨に面して当然ながら野球も中止に。雷が轟く大荒天の中、海浜幕張駅脇の飲み屋までズブ濡れになりながら足を運び、そして祝勝会だか残念会だかわからぬ場で泥酔して帰途についたのだった。



籠の中の鳥状態
ウインアンセム


 どうにか生存が確認できている残りのゴール前写真を救出したいのだが、そのためには本格的なデータ救済ソフトを購入せねばならずこれの相場が揃って10000円前後。馬連200円流しにしておけば何の問題もなかったのだが・・・愛馬と私、そしてGOCと私との絆の深さが今、問われている。

 

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