高崎競馬の年内廃止決定の報を聞きつけ遠征を決めた今回、何より困ったのは事前にガイドブックなどどの資料を拝見してもグ民に適した目ぼしい観光名所が見つからないことだった。紅葉の見ごろはすでに終わりを迎え、立地的にもう少し奥の草津や万座まで行くとスキーすらやっているという季節である。榛名湖でわかさぎ釣りという名案も浮かんだが湖が凍るのは1月下旬〜ということでこれもあえなく没。群馬の南部には何があるのか・・・なるほど、温泉と食い物に大半のページが割かれている理由が垣間見えた気がした。遠出への期待に胸躍らせているゼイタクな愚民の衝動を満足させるのは容易ではないため、今回は早々と「プラン組んでないから!」とお手上げを宣言し、時間に縛られることのないのんびり行程を満喫することを提唱していた。そんな2日間をざっと振り返ろう。
オーナーとその愛馬紹介
とその前に、今回活躍してくれたストリーム号とそのオーナーであるホセのツーショットを。夏前に新車を買ったという情報こそ聞いていたもののなかなか乗る機会がなかったのだが半年が経ちようやく同乗することとなった。ポーズを決めながらも本人は照れ気味。我らがGOCの愛馬もこのくらい人馬一体で走ってくれると救われるのだが。
伊香保市街とパイプから放たれる白糸の滝(仮称)
榛名湖とハゲ山 いや、榛名山
とろろとわかさぎ定食
遅いランチにと榛名湖畔の定食屋でわかさぎのフライを食らう。しかし味はアジフライと何ら変わらなかった。ここらでしばしミーティング。このままだと想定通り何もせぬまま夜を迎えてしまうと、榛名山と伊香保どちらかに掛かるロープウェイに乗ろうという話が出て結局伊香保町立ロープウェイに乗車することに。所要時間5分ほどで着いた見晴展望台から脇道に反れたところにスケートリンクを発見。リンクからほのかに立ち昇る湯気と場内に流れるアナウンスからつい先ほどまで競技が行われてことが察せられた。水澄ましを観たかったものである。高台からの景色を楽しんだ後いよいよ伊香保の温泉街へと入場する。
標高1000mから南アルプスを望む
伊香保温泉街と与謝野晶子の歌が刻まれた石段
宿は伊香保温泉街の石段途中にして、一番メジャーな写真スポットの真横に位置していた。ガイドブックやパンフレットに載っている旅館はさすが伊香保というべきか、どれもお高いためネットで見つけた安値の一軒だったのだがロケーションは完璧だった。残るハードルは料理と温泉。
河鹿橋と伊香保神社
一旦部屋に荷物を置き、寒さが増してきた夕暮れに360段ある石段を踏破し温泉街の外れまで歩くとムードたっぷりな河鹿橋があった。石段の最上部には神社が。さてムサい男が3人、いったい何をお祈りしたものか。
伊香保温泉飲泉所
河鹿橋のさらに先には温泉を飲める飲泉所が。温泉と水の2つの注ぎ口があったがこれがもう鉄の味でマズいのなんのって。川底もそうだったが水の流れに沿うようにどこも茶色にサビついてしまっていた。まあ当然か。
石段からの眺望
さて、夕飯の時間がやってきた。今回と同メンバーで挑んだ昨年の宇都宮遠征では素泊まりを選択したのだが今回は温泉宿ということで夕朝二食付きプランにしたのだった。指定の時間に階下に降りると床に御膳が並べられた別室の和室に通された3人。エアコンが備えられていないのかとにかく寒い。用意された瓶ビールを注ぎ合いこの日初となるアルコールを体内に注入。ご飯も無事写真に収め一品目の料理に手を付け始めた矢先に目の前の襖が開いた。「揚げ物をお持ちしました」。そしてぽっかりと開いた膳の真ん中に添えられていく。「おいおい、なんだなんだ」と慌てて箸を付けてしまった皿の見栄えを整え直し再度記念撮影を試みる。では仕切り直しに、と一品を口に運んだ。が、すぐさま吐き出してしまった。「これ、ホタテやんけ〜(>_<)」。生のホタテ(すし等)は食えるのに調理品が大嫌いなハドラーの本領発揮だった。しかし苦しむハドラーに外野が更なる追い討ちをかける。「でもそれ、一番最初に箸付けてたよね」とポツリ。さすがはホセ、いつもながらツッコミが厳しい。隣ではクラークがマイペースに箸を進めてビールを煽っている。と、思いきや「これ料理さ、冷えたのばっかでイケてないよね」とひと言。「オマエ、食っとるやないけ」というのはハドラーの八つ当たりを含んだ心の声。相変わらず三者三様の振舞いを見せる中坊時代の同級生トリオだった。
食事を終え次なる課題はメインとも言える温泉である。チェックイン時に宿の人間が次々と「ちょっと温めなんですけど入浴して出た後からどんどん暖まってきますので・・・」と含みを残す発言をしていたため若干不安があったのだ。ネットで見た通り『掛け流しの100%天然温泉』であるのは認定証もあるため間違いなさそうだったが。支度を整え再び階下に降りていくと「本日は男湯女湯、どちらでも入ることができるようになっております」と声を掛けられた。せっかくだからと迷わず女湯の門戸を潜った一行。先客は誰もいなかったのだが浴場への扉を開けてみてビックリ、とても狭い。洗い場は2箇所のみ、浴槽も多く見積もっても4人が横に並んで足を伸ばしたらBOOKFULLになる規模であった。肝心の温泉の温度だがこれがまた宿の人間の謙遜でもなんでもなくただただ温く出来上がっていた。湯に浸かりながらもブルブルと震えが走る温泉の存在を未だ知らない。そして「これ、洗い場に出たら確実に風邪引くな」と湯船で口々に呟く野郎どもは気付いたのだった。なんてことはない、この日はただ女性の宿泊客がいなかっただけじゃないか、と。
なんとか無事生還を果たした一行は、夕飯の前に買い貯めておいたビールで再度喉を潤す。しかし寒い寒いとふとんに包まったのが運の尽き、古き良き時代の話に華を咲かす間もなくあっさりと昇天の瞬間を迎えるのだった。最後に耳にしたのは「オレ、スゲー暖まってきてるよ。止まんないよ」と一人今にも浴衣を脱ぎ掛けんばかりのクラークの言葉だった。
なお関係者の方々、○○塗装社の件については割愛してあります。
朝飯と水沢うどん
こうして翌朝を迎えた。相変わらずクラークは朝飯を摘み「冷えてるのばっかじゃん」と宣っている。ホセの側は毎度のことながら瞳を閉じて虚ろなまま箸と口だけが動いて、それでいてしっかりと完食している。天然温泉に拘りがあるのは承知の上だがあれなら加熱をした方がいいんじゃないかやら、あの浴槽の大きさでどうやって収客人数の40人程度をカバーするのかやら、怪訝に思うところもあったが人の良さそうな社長さんによる車の送迎付きで途中、伊香保まんじゅうの美味い店を経由してもらいホセの愛馬の元まで送り届けられることとなった。お世話になりました。
一行はハドラーの「うどん食うぞ」の声に焚きつけられるかのように一軒の麓のうどん屋に流れ着いた。ここ伊香保の水沢うどんは秋田の稲庭うどん、香川の讃岐うどんと併せて日本三大うどんの1つに並び称されていたからだった。そしてたった1時間前に朝食を食べたばかりだというのに、価格に魅せられて冷やの大森を頼んでしまう。加えてマイタケの天ぷらの別注も忘れない。食い切れるわけがなかった。賢く温かいかけうどんに抑えた2人の食べ終わった丼にめんを移し変えて誤魔化そうとするもきざみ海苔とネギが浮かび上がり更なる醜態を晒すこととなった。
この後、競馬場を経て高崎駅の売店で名物のだるま弁当を購入しこれまた高崎名物のパスタの店で反省会をして帰途に付いたのだった。時にのんびりもまた一興である。
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